美しき少年との出会い

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「お前さんのいる北の他にも宿舎はあるわけか?」 「はい。他には東宿舎、西宿舎、それから南の宿舎があります。四神をモチーフにしているとかで、それぞれの宿舎には色違いの紋章が付いているそうです」  冰のいる北宿舎には玄武が掘り込まれた黒い紋が掲げられているそうだ。 「授業の内容も別々で、僕たち北の者たちは他の宿舎の人たちと会うことはありませんでした」 「そうか――。では北以外の宿舎の者たちがどんな教育を受けているのかは知らんわけだな?」 「実際に見たわけではないのですが、噂では聞いています。東の宿舎の人たちは舞踏と音楽の授業ばかりだと聞きました。西は武術とか執事さんがするような立ち居振る舞い、南の宿舎では……床技というのだけを叩き込まれるとか……」 「……ふむ」  それは何とも驚きだ。つまり、この遊郭街に売られて来た時点で各々の個性によって東西南北に振り分けられ、その特技や向き不向きを活かすような教育がなされるというわけか。 「――なるほどな。それで、宿舎にいる者たちは皆お前さんと同じ歳くらいの若者なのか?」 「はい。多分そうです。少し年上かなと思われる人もいますが、僕たちは自分の家族のことや年齢のことを教え合ってはいけないと固く言われているんです。ここに来る前にどこでどんな暮らしをしていたのか、そういう素性のようなことは一切口にしてはいけないと、初めてここに連れて来られた時に宿舎の先生からそう教えられました」  東西南北それぞれに宿舎長と呼ばれる監督者がいて、起床から消灯までのスケジュールや宿舎での規則などを厳しく指導されるのだそうだ。
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