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「息子さんがいなくなられたのはどういった経緯なのでございますか?」
「ふむ、黄の話では学校に行ったまま帰らなくなったそうだ。朝は普段と変わらず登校したようなのだがな」
彼が帰って来なかった翌日に黄老人が学校にも確認したところ、きちんと出席していたという。
「では授業が終わった放課後に姿を消してしまったということでしょうか」
「そのようだな。冰という息子は気立ての良い子だそうでな。黄本人はもちろんだが、周囲の誰に聞いても老人思いのやさしい息子だと評判だ。血は繋がっていないが本当の孫のようだったと皆が口を揃えている」
ということは反抗期というわけではなさそうだ。
「――左様でございますか。となると、やはり何らかの事件に巻き込まれたと考えざるを得ませんな」
黄老人は息子が行方不明になってからというもの、寝る間も惜しんで城内はもちろん、地上の街まで必死に捜し回っているそうだ。
「そのせいで黄は相当心を痛めているようなのだ。今のところディーラーとしての技に影響は出ていないようだが、このまま心労が続けば良くないことは目に見えている。何とかその息子を捜し出してやらんと私も手を尽くしてきたのだが、最近になってようやくと手掛かりが見つかったのだよ」
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