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「どうしたんだよ! 本当に。今日はおかしいよ」
疲れて放心状態の私を彼が抱き締めた。
「へっ!?」
私の顔は汗と涙と鼻水でくしゃくしゃだ。
「やっぱり心配だ。なぁ俺と一緒に暮らさないか?」
「えっ!? こんな時に何言って……」
「前から思ってたんだよ。なぁ、結婚しよう……今日どうしても言いたかったんだよ」
彼はそっと指輪を差し出した。このために私を帰したくなかったのか? 私は頭が混乱している。さっきまでの恐怖を返して──いやいや違う、それは返さなくていい……。
──あぁ、お色直しがしたいっっ……今ならやる。疲れててもやる!! 恐怖なんてくそ食らえだっっ!! ──
「そんな何、言ってるのよ?」
今度は嬉し涙が……って!?
視線を感じる。振り向くとドアの隙間からあの女の影が……。
「返事はちょっと待ってて……四秒後にするからっっ」
「えっ!?」
彼氏を尻目にずかずかとドアに近づき思いきり閉めた。
「覗くなっ!!!!」
〈了〉
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