1 『二番目の姫』

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 五歳の子供には難しい本を山積みにしていく私を見て、乳母と侍女は戸惑っていた。 「おかしいわ。いつもなら、この時間になったら、ケーキをねだるのに」 「お人形遊びをするのに、人を集めないなんて」  昨日までの無邪気な私よ、さようなら。  コホンと咳ばらいをし、キラキラ笑顔を向けた。 「ルナリア、一人で平気。みんな、疲れてるよね? お休みしてて?」  乳母と侍女は驚いていたけど、称賛の声が聞こえてくる。 「なんてご立派なの。五歳とは思えないわ」 「優秀なセレステ様の妹ですものね。普通の子供より、しっかりされてるのも当たり前よ」 「そうよねぇ」  ――え? 結局、セレステなの?  私が褒められたはずが、最後はセレステが褒められる。  二番目になるのはわかっていても、なんだかショックだった。  ――ダメダメ! これくらいで傷ついてどうするの! しっかりして私!  不幸はまだまだやってくる。  私がこの世界で生き延びるためには、それを打ち砕いていかなくてはならないのだ。  これしきのことで、いちいちヘコんでいる場合ではない。  気を取り直し、本棚へ向かう。  
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