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「この子ったら、フリアン様が不在だと運動もしないで、ずっと図書館にいるんですよ。暗くて地味だし、なんの取り柄もなくて困っていますの」
お母様は私を絶対に褒めない。
セレステが一番可愛くて優秀な娘だと思っているからだ。
「では、ルナリア。俺と一緒に来い」
レジェスの紫色の目が私を覗き込み、捕らえて離さない。
けれど、その目は『ついてこい』と言っている。
「はい。ご一緒します」
もちろん、私はレジェスについていく。
オルテンシア王宮で学べることは、もうほとんどないからだ。
「お待ちを! ルナリアをどこへ連れていくおつもりか!?」
堂々とした態度の誘拐犯に、お父様が慌てた。
――そうよね。私は十二歳だし、いくら関心のない娘だからって、あっさり渡さないわよね。
「アギラカリサ王宮だ」
「お、王宮ですと!?」
レジェスの領地ではなく、王宮と聞いてお父様は顔色を変えた。
王子たちでさえ、国王の許可がない限り、気軽に王宮に入れないと聞く。
社交界にデビューすらしていない半人前の私が、アギラカリサ王宮に招待されるなんて、あり得ない話だった。
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