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「どうして……ルナリアだけ……」
セレステはショックを受け、呆然としていた。
なにもかも優先されてきたセレステだけど、アギラカリサ王国の王宮には、まだ行ったことがない。
お父様だって、式典の時に招待されるくらいで、それ以外の交流はなかった。
だから、王子のレジェスが訪れただけで。あの喜びようなのである。
――普通なら、アギラカリサくらいの大国が近づいてきたら、なにかあるんじゃないかって警戒するはずなのに、お父様ときたら、大喜びなんだもの。
アギラカリサ王から、いつでもカモにできる国だって思われているに違いない。
「父はマーレア諸島の商人たちをもてなすため、王宮に呼んだ。そこで、ルナリアを商人たちに紹介したいと思っている」
「私の役目はオルテンシア王国とマーレア諸島との間に、交流を持たせるための外交役ですね?」
「そうだ」
私の言葉にレジェスは、やっと話が通じる相手を見つけたという顔でうなずいた。
というより、私くらいしか話が通じないと思われている可能性がある……
――あ、お父様の顔に『わからない』って書いてある。
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