12 二番目じゃない私に

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『貴国に珍しいスパイスを安く譲ってやろう。料理がうまくなる』 『香りの良い紅茶がある。手頃な値段で紅茶が飲めるぞ』    レジェスの兄たちは、いかにもお父様の興味を引く言葉で、に誘ったのだ。  たしかにその時は破格の価格で、とても安かった。  けれど、それは期間限定の割引セール。  まさか数年後、価格が数倍以上になるとは、お父様は予想していなかった。  もちろん、私は止めたけど、子供の言うことだと鼻で笑い飛ばされてしまった。  レジェスからの手紙とアギラカリサ王国の王位継承争いの激化で、なにか裏があると思っていたからだ。  お父様が九歳だった私の話を聞くわけもなく、説得に失敗した私は高くなっても買うしかないと諦めた。    ――でも、これで頭打ちの最高値だと思ってたのよ! 今でさえ高値で、さすがにこれ以上は値上げしないだろうって考えてたのに!  さらに釣り上げてくるなんて、レジェスの兄たちはよっぽど腹黒い。  というか、人がどれだけ苦しもうが、知ったことではない人間。  私の予想以上にレジェスの兄たちは非道だ。 「どうしたらよいのだ……」  お父様は途方に暮れていた。
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