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たとえるなら、甘い砂糖の味を知ってしまった人間が、それを我慢できるかどうか……
――塩味だけのチキンは辛いわ。肉の臭みもとってくれるし、スパイシーな味がなくなるなんて、私だって耐えれない!
事情がわかる私でさえ、こうである。
それくらい人々の生活に、マーレア諸島のスパイスは馴染んでしまっていた。
やっと事情がわかって慌て出したお父様と青ざめた顔のお母様。
お父様がノリノリでスパイスと茶葉を大量に購入し、国民にも手軽に使える値段で売りさばいていた頃、レジェスの兄たちが笑っていたかと思うと腹が立つ。
――悔やんでいてもしかたないわ。次の行動に移らないと、状況が悪化するだけよ。
「お父様。国民に楽しみを与えようとしたお父様の気持ちはわかります」
「ルナリア! そうだろう!? ちょっと美味しいものを食べられるようにしてやりたかったのだ!」
お父様は涙目で、がっかりしているのがわかった。
政治が苦手なお父様は、国民からあまりよく思われていない。
だから、ちょっとカッコいいところを見せてやろうと思って、新しい風を取り込んでみたのだ。
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