12 二番目じゃない私に

3/9
前へ
/314ページ
次へ
 たとえるなら、甘い砂糖の味を知ってしまった人間が、それを我慢できるかどうか……  ――塩味だけのチキンは辛いわ。肉の臭みもとってくれるし、スパイシーな味がなくなるなんて、私だって耐えれない!  事情がわかる私でさえ、こうである。  それくらい人々の生活に、マーレア諸島のスパイスは馴染んでしまっていた。  やっと事情がわかって慌て出したお父様と青ざめた顔のお母様。  お父様がノリノリでスパイスと茶葉を大量に購入し、国民にも手軽に使える値段で売りさばいていた頃、レジェスの兄たちが笑っていたかと思うと腹が立つ。  ――悔やんでいてもしかたないわ。次の行動に移らないと、状況が悪化するだけよ。 「お父様。国民に楽しみを与えようとしたお父様の気持ちはわかります」 「ルナリア! そうだろう!? ちょっと美味しいものを食べられるようにしてやりたかったのだ!」  お父様は涙目で、がっかりしているのがわかった。  政治が苦手なお父様は、国民からあまりよく思われていない。  だから、ちょっとカッコいいところを見せてやろうと思って、新しい風を取り込んでみたのだ。
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1154人が本棚に入れています
本棚に追加