1 『二番目の姫』

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「王女というからには、外交も大切よね」  ついでに言語の本も加えた。  少数部族の言語を話せる人間は少なく、また難解である。  けれど、これを使えるようになれば重宝されるはずだ。  ――五歳にしてスキルアップを考えることになろうとは。  昨日まで、能天気にクリームたっぷりのケーキをほおばってグータラしていた自分が懐かしい。  本を積み重ねて席につく。  この知識はゲームを攻略するための攻略本だと思えばいいだけのこと。  私には今まで高難度クエストを攻略するために学んだ力がある。  そう、私は『二番目の姫』の人生を攻略する。  ――簡単に死んでたまるものですか! 私はこの世界で楽しい老後を送るんだから!  そう決意した私は、せっせと本を読み、この世界の知識を蓄えていく。  乳母と侍女たちが『熱でもあるのかしら?』『新しい遊びかも……?』という囁く声を無視して。  本を数冊読み終わったところで、図書館の重い扉が開いた。 「あれ? ルナリア。勉強中?」 「珍しいな」  図書館へ入ってきたのは、私を捨てる予定の婚約者フリアン(まだ婚約してないけど)。  そして、セレステの婚約者となる隣国の王子レジェスだった。  やがて、ルナリアと婚約を破棄するフリアンと牢屋へ放り込んで嘲笑うレジェスが、私に親しげな笑みを向けていた――
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