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――はぁ……。喜ぶところじゃないわ。十二歳の王女に大事な交渉を任せることになって、もっと落ち込むところだと思うけど。
私のほうが不安である。
レジェスがいてくれるからといって、十二歳の私の話をまともに聞いてもらえるとは思えなかった。
しかも、社交界デビューもまだだし、知り合いもいないアウェーな王宮に乗り込むのだ。
私のそばに控えて、いざとなったら代わりに交渉できる大人が、どうしても必要だった。
それができる人はただ一人だけ。
「私に家庭教師のシモン先生をつけていただけませんか?」
「シモン? ああ、ベルグラーノ伯爵家の三男のことか」
――私にどこまで無関心なの? 家庭教師が誰なのかも忘れてるとか、あんまりだわ。
セレステの家庭教師は何人もいるけれど、私はたった一人。
たった一人の家庭教師の名前でさえ、覚えておらず、いかに無関心であるかがわかる。
「そうか……。ベルグラーノ伯爵家か……」
お父様はなにか呟き、お母様は険しい顔をしていた。
お母様の視線に気づき、ハッと我に返ったお父様は私に言った。
「ふむ。お前とベルグラーノ伯爵家の三男に任せよう」
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