13 狙われた命

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 私が否定しようとした瞬間、レジェスに抱き締められた。  ――えええええっ!?  いったいなにが起きたのか。  急すぎる展開に混乱する私に、レジェスが言った。 「ルナリア。身を低くして頭を隠せ」  荒々しい馬の蹄の音が聞こえてくる。  レジェスは片手で私を抱き締め、空いた手で手綱を握ると馬を走らせた。 「シモン! 森へ入る! 俺についてこい!」  レジェスの声に混じって聞こえたのは金属音だった。  ――戦っている? でも、誰と誰が戦ってるの?  日暮れの森の中は暗く、視界が悪かった。  先頭を走るレジェスはものともせず、馬を走らせる。 「あ、あのっ! レジェス様。いったいなにが……?」 「しゃべるな。舌を噛むぞ。俺の命を狙う暗殺者だ。兄上たちか仕向けたのだろう」  ――暗殺者!? レジェスは命を狙われてるの?  湿った草を踏みつけ馬が走る。  森の生き物たちが驚き、獣は逃げ、鳥が一斉に飛び立つ。  ここにいると合図を送っているのと同じで、森に入っても追手を振り切れそうにない。  なぜレジェスが森に入ったかわからなかった。
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