13 狙われた命

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 ――こんな暗いのに遠くまで見えるわけない。矢は外れるわ。レジェスはなにをするつもりなの? 「レジェス殿下がいたぞ!」 「こっちだ!」  そんな声が聞こえた瞬間――レジェスが矢を放つ。 「ぐあっ!」 「うわあああ!?」  暗闇の中、レジェスが放つ矢は一本も外れない。  それも神様が宿っているのではというくらい的確に相手を射る。  矢を放つ弦の音を頼りに、暗殺者が集まってきても誰も近寄れない。 「ば、化け物だ」 「なぜ、この暗闇の中で俺たちの姿が見えるんだ?」  レジェスを化け物と呼ぶ。でも、レジェスにとって化け物は―― 「化け物は兄上たちだ。俺の命を狙う化け物どもめ」  ――実の兄たちだった。  レジェスは私を気にかけてくれていたのは、不遇な私を自分と重ねて見ていたからかもしれない。  噂では荒れ地を領地に与えられたレジェスは、かなり苦労していると聞く。  木の根を取り除き、岩を掘り起こし、水路を引き、ようやく小麦が実り、収穫できたのは一年前のこと。 「ルナリア、わかったか? 言葉が通じ、血が繋がっているからといって、必ずしも味方になるとは限らない」
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