13 狙われた命

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 レジェスは笑っていたけど、心からの笑みではなかった。 「片付いたか」  森の湿った空気に混じって血臭が漂う。  死屍累々となり、暗い森の中では鳥と獣が騒いでいた。   従者たちに矢筒と弓を渡しながら、レジェスは言った。 「ルナリア。怖いだろう? シモンの馬に乗るか?」 『自分が怖いだろう?』  私にはそう聞こえた。  レジェスの紫色の瞳は、夜の訪れを知らせる色。  そして、空が明るくなる前の夜明けの色でもある。  レジェスは誰も味方を死なせることなく守りきった。 「いいえ。怖くありません。レジェス様の馬に乗せてください」 「……そうか」  気のせいでなければ、少しだけレジェスがホッとしたように見えた。 「これはなんというか……。噂以上に物騒な国ですね」 「シモン先生は知っていたんですか?」 「もちろんです」  レジェスが命を狙われてるなんて、シモン先生は授業で教えてくれなかった。  もちろん、小説『二番目の姫』にもレジェスについて詳しく書かれておらず、アギラカリサ王国の末の王子であるとだけ…… 「レジェス様、気を付けてください。まだ残党が!」
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