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従者の声に気づき、暗い闇の中に見えたのは銀色の矢じりだった。
レジェスではなく、私に向いている。
――物語はストーリーどおりに進めようとする。ストーリーとは違う行動をとったから、私を殺すの?
そう思った瞬間、声が聞こえた。
「レジェス、油断は禁物だよ」
暗殺者の体が倒れ、赤い血が剣につく。
その剣の持ち主は、金髪に青い目をした青年――
「フリアン様!」
フリアンは身長が伸びたけれど、王子様みたいな容姿は変わらない。
「ルナリア、迎えにきたよ。僕と一緒に帰ろう? アギラカリサは危険すぎる」
騎士団の任務中だったはずのフリアンは、私のアギラカリサ王国行きを誰から聞いたのか、ここまで私を追って迎えにきたらしい。
物語を正しい姿に戻そうとする強制力が働いている気がした。
アギラカリサ王国へ私が行くのは、物語にとって不都合なようだ。
「私は戻りません。フリアン様もわかっているはずです。マーレア諸島との取引は、オルテンシア王国にとって絶対に必要です!」
「そうだけど、十二歳の君が行かなくてもいいと思うんだ。大人だけでじゅうぶんだよ」
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