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「あ、あのっ! レジェス様。作戦だとわかってますけど、私が婚約者だなんて、レジェス様の評判が悪くなってしまいます」
なるべく小声で言った。
「それほど良くもない。俺の評判は気にするな」
笑い飛ばしたレジェスだけど、レジェスの兄三人は、ひきつった笑いを浮かべていた。
――そうよね。そうなるわよね。王位継承戦の大事な時期に、十二歳の婚約者候補を連れてくるなんて正気じゃないわ。
王になるのを放棄したと思われてもおかしくない。
「王宮前で騒いでいる奴がいると思ったら、またレジェスか。お前は毎回、なにかやらかすな」
その声はレジェスに似ているけど、もっと威圧感があって太い声だった。
一瞬で空気が変わる。
さっきまでニヤニヤしていた三人の王子の表情がこわばり、さっと身を引いた。
「父上」
声の主はアギラカリサ王だった。
黒髪に青い目をし、髭を生やしたアギラカリサ王は、レジェスとよく似ていた。
「レジェスが騒がしくしてしまい、申し訳ありません」
「こいつときたら、ふざけて十二歳の子供を婚約者にすると言って連れてきたんですよ」
「父上の言葉を軽んじている証拠です」
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