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ベッドから出て、そっとティアに毛布をかけた。
「ティア、いつもありがとう。大好きよ」
ぎゅっとティアを抱きしめた。
私のお母さんみたいなティア。
私には家族らしい家族はいなかったけど、ティアがいてくれることで、どれだけ救われているかわからない。
――シモン先生もそう。私は恵まれているわ。
私はティアたちを失いたくない。
眠るレジェスとフリアンの顔を見る。
二人とも今はすごく優しい。
セレステと幸せになっても、他の女性と結婚しても、私は大好きでいられる――だから。
「私を嫌いにならないで……」
――私はレジェスとフリアンの幸せを祝福できる。
私が闇の力に目覚めても、今までどおりの優しい二人でいてほしい。
私の願いはそれだけだ。
全員、眠っているのを確認し、扉の取っ手に触れた。
音をたてないようにそっと部屋を抜け出す。
廊下には燭台、部屋の前にはランプが吊るされている。
夜の王宮は不気味で怖いけど、暗くないのだけが救いだった。
「巫女がいるのは、ここより奥ってことよね」
走ると私の小さな足音が廊下に響く。
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