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廊下の向こうから兵士が見回りに来るのが見え、慌てて庭に隠れた。
兵士が行ったのを見計らって、庭から出ようとすると、異国の香りが漂っていることに気づいた。
「この香り……?」
花の香りとは違う。
香りを探し、草むらから顔を出すと、そこには黒髪に黒目の異国風の男性が立っていた。
日に焼けた顔と鍛えられた腕。
髪と腰に巻いた布は絹の薄布で、派手な飾り剣が見える。
飾り剣は戦うための武器ではないとわかったから、この人は暗殺者ではない。
でも、身なりから察するにこの人は――
「マーレア諸島の方ですか?」
『子供……?』
彼が話した言語は、マーレア諸島でもっとも裕福な部族、クア族の言葉だった。
――きっとギラカリサ王のお客様よね。マーレア諸島を優遇してるから。王宮に泊めてもおかしくない。
でも、ここは王宮の奥である。
身内のレジェスならともかく、外国のお客様が泊まるなら、別の場所にするはずだ。
『なぜここにいるのですか?』
クア族が使うマーレア語で問いかけると、彼は驚き、身を引いた。
子供だと思って警戒していなかったのだろう。
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