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『闇夜なら忍び込みやすいが、賊が入れぬよう王宮中をランプが照らしている』
『それで、こんな明るいのですね』
『アギラカリサは恨みを買いすぎなのだ。侵略した異民族の力を封じ、国を支配できぬようにする』
ルオンは巫女の存在を知っている。
――まさか知っていて、殺しにきたとか?
『支配できなくなった王家は滅びるだけだ』
『お言葉ですが、ルオン様。特別な力に頼り、まともな政治をしない国は滅びるだけです』
オルテンシア王国がまさにそうだ。
光の巫女の出現に頼り、国のためになにができるか考えようとしなくなった。
『お前はレジェスと同じことを言う』
『レジェス様とは友達なのですか?』
『そうだ。あいつだけが、この国で唯一、血が通っている人間だ』
ルオンがレジェスの名を出した時、どこか親しげな様子だった。
私だけでなく、レジェスはアギラカリサによって、苦しめられている人を助けているのだ。
『こんな出会いでなかったら、もっと話したかったが……』
ルオンは王宮の奥を気にしている。
なにか気配を感じるようだ。
――誰かが来る。
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