16 いつか言えたら

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「理由があるはずだ。理由を言ってみろ」 「それは……」  闇の力に目覚めるから、なんて言えない。 「ルナリア。俺に理由を話せ」  レジェスに話す――話したら楽になれる?  この世界は、小説『二番目の姫』という物語の世界。  これから、私は闇の力に目覚めて死ぬから、巫女に力を封じてもらいたい。  ――なんて言える?  嘘を言ったと思われ、軽蔑されるのがオチだ。  レジェスから冷たい目で見られたくない。 「……言えないです」  嘘は言いたくないし、本当のことも言えない。  このままだと、レジェスの信頼を裏切ってしまう気がして、泣きそうになった。 「ルナリア、泣くな。泣かそうと思って言ったわけじゃない。お前が幼い頃から、なにか悩んでいると気づいていた。だが、それがなんなのかわからない」  レジェスの紫色の瞳はとても優しく、私を見つめている。 「五歳のお前が必死に学ぶのを見て、その姿に自分を重ねていた。俺自身も生き延びるのに必死だったからだ」 「レジェス様……」 「いつか、言えるようになったら言え。俺が力になってやる」
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