16 いつか言えたら

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 忠告を受け、逃げていった者をレジェスは追わず、黙って逃がす。  それを見た暗殺者たちは一気に数を減らし、姿を消した。  ――すごい。剣術だけじゃなくて、駆け引きもうまいわ。  それに戦い慣れている。  暗闇の中でも見える宝石みたいな紫色の瞳。  その瞳が今は不思議に思えた。  敵がいなくなると、フリアンは血をはらい、剣を鞘に戻す。  その仕草はとても優雅だった。  でも、私に向けた顔は怖かった。 「ルナリア」 「は、はいっ!」 「君にしては、らしくないことをしたね。どれだけ心配したかわかるかい?」  いつも優しいフリアンだけど、今回ばかりは違った。 「心配かけてごめんなさい」 「ここはアギラカリサ王宮なんだ。自由に動いていい場所じゃない。わかってるだろう?」 「はい……」 「レジェスだけならともかく、ルナリアまで無茶をしたら、僕の心臓がもたないよ」  フリアンは私に怪我がないか確認し、ホッと安堵の息を吐く。 「本当にごめんなさい……」 「いいよ。けど、次はちゃんと僕を起こしてから行くこと。ほら、部屋に戻ろう?」  フリアンは微笑み、私の頭をなでて手を繋ぐ。
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