1215人が本棚に入れています
本棚に追加
忠告を受け、逃げていった者をレジェスは追わず、黙って逃がす。
それを見た暗殺者たちは一気に数を減らし、姿を消した。
――すごい。剣術だけじゃなくて、駆け引きもうまいわ。
それに戦い慣れている。
暗闇の中でも見える宝石みたいな紫色の瞳。
その瞳が今は不思議に思えた。
敵がいなくなると、フリアンは血をはらい、剣を鞘に戻す。
その仕草はとても優雅だった。
でも、私に向けた顔は怖かった。
「ルナリア」
「は、はいっ!」
「君にしては、らしくないことをしたね。どれだけ心配したかわかるかい?」
いつも優しいフリアンだけど、今回ばかりは違った。
「心配かけてごめんなさい」
「ここはアギラカリサ王宮なんだ。自由に動いていい場所じゃない。わかってるだろう?」
「はい……」
「レジェスだけならともかく、ルナリアまで無茶をしたら、僕の心臓がもたないよ」
フリアンは私に怪我がないか確認し、ホッと安堵の息を吐く。
「本当にごめんなさい……」
「いいよ。けど、次はちゃんと僕を起こしてから行くこと。ほら、部屋に戻ろう?」
フリアンは微笑み、私の頭をなでて手を繋ぐ。
最初のコメントを投稿しよう!