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「もうっ! そんな物騒なことが起こるわけないじゃありませんか!」
「え? う、うん……そうね……」
のんきな侍女は、アギラカリサ王宮の殺伐としたやり取りに、少しも気づいていないようだ。
大国の豊かな暮らしと華やかな姿にうっとりしていて、危機感ゼロ。
――ああ……。お父様を彷彿させるわ。
オルテンシア王国の気質かもしれない。
「ルナリア様! アギラカリサで仕立てられた美しいドレスをご覧になってください!」
「ドレス? 誰が頼んだの?」
お父様がそんな気のきいたことをするとは思えなかった。
「レジェス様が用意してくださったんですよ!」
「新しいドレスです。おさがりじゃないんですよっ!」
侍女は興奮気味だけど、ティアは冷静だった。
「レジェス様は前もって、仕立て屋にドレスを注文していたようですね。それを考えたら、ルナリア様をこちらにお連れしようと、最初から決めていらしたということ……」
ティアはレジェスの策略に、私が利用されたと思ったらしく、ちょっと不満そうだった。
けれど、レジェスが注文したドレスを見たら、ティアも嬉しそうな顔をしていた。
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