19 兄たちの卑怯な思惑(1)

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 だけど、増えた家畜を維持するには大量の餌が必要になる。  マーレア諸島は漁業が盛んで、農業技術のほうはそれほど発達していない。  現在の生産力を考えたら、多くの家畜を育てる余裕はないはずだった。  家畜に与える餌を優先すれば、人が飢えて死んでしまうだろう。  ――マーレア諸島の弱点に気づいて、王子たちはそれを利用したんだわ。  ルオンが言う『とある連中』が誰なのか、聞かずともわかる。 『家畜の贈り主はアギラカリサの王子たちですね』 『そうだ。島にいなかった珍しい家畜を育て、民の生活は豊かになった。だが、餌が足りない。アギラカリサから餌を大量に買わねばならなくなった』  ――なんて卑怯なの。オルテンシア王国に仕掛けた罠と同じ方法で、マーレア諸島からもお金を巻き上げようとしてたなんて!  三人が手を組んだに違いない。 『家畜の餌を他国から手に入れるという方法もあるが……』  ルオンは私を見た。  一時的にオルテンシア王国から餌を仕入れても、家畜の数は増え続け、根本的な解決にはならない。  マーレア諸島の問題は民が口にする食料と直結しているぶん、オルテンシア王国より深刻だ。
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