19 兄たちの卑怯な思惑(1)

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 スパイスとお茶は買えなくても不満で終わるだろうけど、家畜を優先した場合、飢え死にする人間が出る。  家畜に与える餌は、冬を越すために必要な食料であるなら、今年の冬のマーレア諸島は――考えただけで恐ろしい。 『ルオン様。マーレア諸島は多くの無人島を保有しております。私なら、人の住んでいない場所を開墾し、餌のための土地に変えます』 『今から、餌を作るというのか?』 『いいえ。今年は開墾に力を入れ、それによって手に入れた木材を売って冬をしのぎます』  地図を頭に思い浮かべた。  小さな島々が点在するマーレア諸島。  それぞれの島は近く、小舟で行ける近さである。  そして、海が綺麗なことで有名で、お金持ちの貴族がわざわざ船を出して海を眺めに行くほどの景勝地だ。 『開墾した後は畑だけでなく、島に別荘を建て、商人たちに売るといいでしょう。そうすることで、自然に船が行き来するようになって、餌の運搬にも困りませんわ』 『富裕層向けの別荘地にするというのか』 『お金のあるところに商人は集まります。自分専用の島と屋敷は、彼らののステイタスになるでしょうね』
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