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レジェスの言葉にフリアンは同意できないと首を横に振った。
「僕は次期公爵で、レジェスは王になる。自由なんかどこにもないんだよ」
責任感が強く、真面目なフリアンと奔放で行動力があるレジェスは真逆で、考え方も正反対だ。
「ルナリア。明日の朝、明るくなったらすぐに立とう。仕返しされる前にアギラカリサ王国を出た方がいい」
――たしかにそうだわ。三人の王子が数年かけた罠を駄目にしたんだから、私に仕返ししてもおかしくない。このまま、アギラカリサ王国にいるのは危険だわ。
自分の置かれた立場に気づき、フリアンにうなずいた。
マーレア諸島との取引ができるようになり、こちらは目的を果たした。
けれど、レジェスの兄たちはオルテンシア王国からの利益だけでなく、マーレア諸島からの利益も手に入らなくなった。
「オルテンシア王国領まで、責任もって俺が護衛しよう」
「レジェスが来るほうが危険な気がするけど、向こうの手口を知っているからね」
「おい、俺をあいつらの同類みたいに言うな」
「ルナリア。大丈夫だよ。君は僕が守るから」
フリアンはそう言ってくれたけど、このまま無事に私は帰れるだろうか。
――物語の強制力が働いて、なにか悪いことが起きなければいいけど。
うまくいって嬉しいはずなのに、嫌な予感がして心から喜べなかった。
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