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「そうか。では、父上の侍女に案内してもらえるよう頼んでおこう。安心しろ。父上付きの人間に、なにかできる奴はいないからな」
「は、はい……」
旅立つギリギリまで、アギラカリサ王宮は物騒だった。
レジェスが侍女を呼ぶ。
そして、そっと私に耳打ちした。
「おい、ルナリア。父上付きの侍女だが、元は父上の乳母だ。根は優しいが悪さには厳しい。怒らせるなよ?」
「怒らせるようなことはしません……」
いったいなにがあったのか、レジェスの顔は真剣だった。
レジェスでこれなら、兄三人はさらにひどい目にあってそうだ。
呼ばれて現れた姿勢のいい年配女性は、灰色の髪をきっちりまとめ、鋭い青の瞳をしていた。
――アギラカリサ王を育てただけあって強そう。
ごくりと唾をのみ込んだ。
「オルテンシア王国のルナリアです」
「陛下から聞いております。オルテンシア王国の王女ルナリア様。わたくしが案内役を務めさせていただきます」
「はっ、はいっ!」
厳粛な空気に姿勢をただした。
たとえるなら、厳しい先生のような雰囲気だ。
アギラカリサ王の威圧感とは、また違う威圧感を持っている。
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