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「父上の話が終わる頃に迎えにくるからな」
レジェスは侍女に私を任せると、忙しそうに去っていた。
みんな、旅立ちの準備をしていて忙しい。
ティアたちも私のそばを離れ、ドレスや身の回りのものが入った荷物を積み込んでいるところだ。
「では、僭越ながら。わたくしが先導します」
「お願いします」
国王陛下の部屋は遠く、長い廊下が続いた。
廊下には強面の兵士たちが並び、国王を育てたという乳母が通ると頭を下げる。
国王の信頼を得て、敬愛する者だけが護衛を許されているのだとわかる。
――ものものしい雰囲気だわ。
だらしない兵士は一人もいない。
「どうぞ、こちらへ」
私が案内されたのは国王陛下の私室だった。
侍女に長い黒髪を束ねさせ、お茶を飲んでいる。
――くつろいでるし、これって完全にプライベートよね。
雰囲気からいって、難しい話をするわけではなさそうだ。
「ルナリア王女がきたか」
――私の名を呼んだ。
アギラカリサ王宮に訪れた時は、呼んでもらえなかった私の名前。
それを自然に呼んでもらえたのが嬉しくて、にっこり微笑んだ。
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