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「帰国前にお会いできて嬉しいです」
「ふん。俺に会いたいと言う人間などいない」
自分が持つ威圧感は自覚しているらしい。
「そんなことないです。私は国王陛下に名前を呼んでもらえたので、会えてよかったと思います」
「たかが、名前でそこまで喜ぶか」
「私にとって名前は特別です。二番目の姫と呼ばれるより、名前で呼んでもらえたら、それだけで明るい気持ちになれます」
――二番目の姫。小説『二番目の姫』でのルナリアはそう呼ばれていた。
ルナリアと名前を呼ばれるのは、私にとっての希望だ。
「変わった王女だ。だが、面白い」
「面白いですか?」
「昨晩の手腕は見事だった。王子たち三人を出し抜いたであろう?」
――国王陛下は、オルテンシア王国とマーレア諸島に仕掛けた罠をご存じだったんだわ。
歴代のアギラカリサ王がそうであったように、王はそれぞれの王子がどう動くが見ている。
「出し抜いたわけではありません。私はただマーレア諸島の紅茶とスパイスを取引できたらいいなと思って、お願いしただけです」
「なるほど。お願いか」
国王陛下はひとつ疑問を持っている。
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