20 兄たちの卑怯な思惑(2)

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「帰国前にお会いできて嬉しいです」 「ふん。俺に会いたいと言う人間などいない」  自分が持つ威圧感は自覚しているらしい。   「そんなことないです。私は国王陛下に名前を呼んでもらえたので、会えてよかったと思います」 「たかが、名前でそこまで喜ぶか」 「私にとって名前は特別です。二番目の姫と呼ばれるより、名前で呼んでもらえたら、それだけで明るい気持ちになれます」  ――二番目の姫。小説『二番目の姫』でのルナリアはそう呼ばれていた。  ルナリアと名前を呼ばれるのは、私にとっての希望だ。 「変わった王女だ。だが、面白い」  「面白いですか?」 「昨晩の手腕は見事だった。王子たち三人を出し抜いたであろう?」  ――国王陛下は、オルテンシア王国とマーレア諸島に仕掛けた罠をご存じだったんだわ。   歴代のアギラカリサ王がそうであったように、王はそれぞれの王子がどう動くが見ている。 「出し抜いたわけではありません。私はただマーレア諸島の紅茶とスパイスを取引できたらいいなと思って、お願いしただけです」 「なるほど。お願いか」  国王陛下はひとつ疑問を持っている。
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