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レジェスの兄たちが凡庸だと判断した王は、レジェスに期待した。
王の名前を持つ弟を兄たちはどう思っただろう。
侍女たちが手を止めたのがわかった。
でも、それは一瞬でじろりとにらまれ、慌てて手を動かす。
「レジェスの妃になるつもりなら、今以上に努力せよ」
「はい。レジェス様の妃になる……妃? 私が妃……?」
言いかけて、ハッと我に返った。
――あれは王宮に入るための嘘だって気づいているはず!
国王陛下は返答に困る私を見て、悪い顔で笑っていた。
「楽しみにしているぞ」
――ハメられた気がする。
嘘でしたなんて、私の口から言えるわけない。
「……努力します」
「うむ。下がっていいぞ」
今以上に、私の才能を伸ばすためのプレッシャーをかけ、よりふさわしい妃に育てようという思惑だ。
お辞儀をし、皇帝陛下の私室から出る。
「これって、私が婚約者として、アギラカリサ王から認められたってこと?」
――レジェスの婚約者。
なんだか、すごく嬉しい。
もちろん、正式なものではないし、なにげなく言っただけかもしれない。
「婚約者……。婚約者だって!」
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