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「国王陛下に帰国の挨拶をしてまいりました。皆様もどうかお元気で……」
さっさと挨拶をして離れるつもりが、私の腕を乱暴につかんだ。
――ひっ、ひえ!? なに?
とっさに振りほどこうとしたけど、十二歳の私の力じゃ、びくともしない。
「放してください!」
「帰る前に庭の池で朝食でもどうだ?」
「今から俺たちは船の上で朝食をとる」
「少し付き合え」
大きな庭園――というより森である。
木々に囲まれた庭に小さな人工池があり、その池には船を浮かべて遊ぶことができるようになっていた。
――贅沢。この庭だけでオルテンシア王宮くらいあるんじゃないかしら。
船に乗って朝食は素敵だけど、このメンバーで『楽しく食事』なんて想像もつかない。
それに、私が嫌がっているのがわかるくせに、船までずるずる引きずっていく。
「もう出発の時間ですから困ります!」
拒否すると、三人から怖い顔でにらまれた。
「まさかアギラカリサの王子の誘いを断るのか?」
「さっさと船に乗れ」
「俺たちが朝食に付き合えと言っているんだ。それがどんな光栄なことかわからないのか?」
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