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どうやら、私を池の真ん中に放置するつもりらしい。
――そんな!
普通の十二歳の子供なら、不安で泣いていたと思う。
「レジェスが気づき、迎えに来るまでそこにいろ」
「こんなくだらないことをして、満足ですか?」
ライネリオの手には船をこぐための櫂があり、それがなくては、岸辺に戻れない。
「俺たちの計画を邪魔しておきながら、生きて帰れるとでも思ったか?」
「レジェス様なら気づいて、すぐに来てくれます」
レジェスなら私を見つけてくれる。
だから、私は慌てたりしないし、泣いたりしない。
「そうだ。レジェスを待て」
「そのほうが都合がいい」
大笑いして、私が乗った船から遠ざかっていく。
「早くレジェスが来ればいいのにな」
「まったくだ」
そんなことを言いながら、船を降りて楽しげに話しながら去っていった。
池の上に冷たい風が吹く。
船が揺れるけれど、天気はそこまで悪くない。
――なんのために、私をここに置き去りにしたの?
まるで、私はレジェスをおびき寄せるための餌である。
これは罠だ。
でも、船は丈夫だし、池もそれほど大きくない。
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