1394人が本棚に入れています
本棚に追加
まだ生きている暗殺者がいたようで、フリアンが剣を抜いた。
レジェスはフリアンを手で制す。
「待て。フリアン。とどめを刺す必要はない」
もうほとんど息がなく、大量の血を流し、助からないとわかる。
暗殺者は最後の力を振り絞り、言葉を発した。
「セレステ様……申し訳ありませ……」
死に際に口にした名はセレステの名前と謝罪だった。
「フリアン。今、セレステと言ったのを聞いたか?」
「あ、ああ……。聞いた」
私の聞き間違えではなかった。
フリアンもレジェスも同じように聞こえていたのだ。
死体から覆面をはぎとり、フリアンは顔を確認する。
「男爵家の息子だ。セレステ様に好意を持ち、付きまとっていたな」
「兄上たちが暗殺者を集めた時、紛れ込んだのだろう。身元を調べず、手当たり次第に雇っているのを考えたら、兄上たちは手駒不足だな」
フリアンは混乱し、青ざめた顔で言った。
「セレステ様はなぜこんなことを……」
「わからないか? 俺はわかる。兄上から命を狙われていたからな」
「セレステ様がアギラカリサの王子と同じ!? そんなわけが……!」
最初のコメントを投稿しよう!