3 裏の顔(1)

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 多くいる婚約者候補の中で選ばれるのは、やっぱり一番のセレステなのだ。 「レジェス様は薔薇がお嫌いですか?」  表情を曇らせ、泣きそうなセレステに乳母と侍女はハラハラしていた。  セレステが泣けば、お父様とお母様が大騒ぎする。 「わかった。フリアンとの剣の稽古があるから少しの間だけだぞ」  その返事を聞いて、セレステは胸の前に両手を握りしめて喜んだ。  可憐な仕草に乳母も侍女もにっこり微笑んでいる。  でも、私だけ違っていた。  ――庭を散歩するのはいいけど、なんだかおかしいわ。どうしてセレステは図書館を待ち合わせ場所に選んだのかしら?  さっきから、ずっと疑問に思っていた。  セレステが『庭で散歩をしたい』と考えていたなら、待ち合わせを庭にすればよかったのでは?  わざわざ図書館にする必要はない。   ――幼いルナリアなら、外で散歩したいって言い出すわよね。乳母も侍女も困るだろうけど、わがままを押し通すと思うわ。    昨日までの自分を振り返ったら、そうしていたと思う。  勉強しているより、明るい外で花を眺めたほうが楽しいとわかるから。  私の選ぶべき選択肢は――
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