3 裏の顔(1)

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 フリアンが優しく私に語りかけてきて、少しだけならいいかもと思ってしまった。 「じゃあ、お姉様とお散歩しようかな……」 「まあ! 嬉しい!」    セレステが微笑むと花のようで、見惚れてしまう。 「ルナリアは私が面倒を見るから、乳母は休んでいていいわ」 「セレステ様。そんなわけには……」 「庭を一周するだけだから。ね? ルナリア?」 「うん。ルナリア、お姉様とお散歩する!」  年齢以上のしっかりした振る舞いと優しい気遣いに、乳母もセレステを信用した。 「まあ、セレステ様がご一緒なら大丈夫ですわね。ルナリア様、淑女らしくしてくださいね。犬のように駆け回ってはいけませんよ」  ――うわ、セレステの信頼度高すぎ。  そして、私への信頼度は低すぎた。  乳母は私に帽子をかぶせ、セレステに一礼する。 「では、ルナリア様をお願いします」 「ええ」  私の手を引き、セレステは庭へ向かう。 「今日の朝咲いた薔薇なのよ。ルナリア、トゲに気をつけてね」 「うん!」  セレステは非の打ち所がない素敵なお姉様で、小説『二番目の姫』に書いてあったとおり優しい子だった。
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