26 駆け落ち!?

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「巫女の封じる力は、多くの国を支配するアギラカリサにとって必要な力です」 「うん? 封じる?」 「え? 違うのですか?」  スサナが自分の前髪を手ではらい、私に見せた。  額に複雑な星の紋がある。 「奪う力です。異民族の力を奪うのが、アギラカリサの巫女の力」 「奪う……。では、返すこともできるのですか?」 「はい。もちろんです。返さなければ、奪った力は巫女の力の一部となって、自由に使えます」  手のひらに水をふわりと浮かべ、風の力で操る。  風と水――複数の異民族から奪った力をスサナは持っているのだ。 「巫女とは器なのです。異民族の力を奪って閉じ込めるための」  スサナは悲しげな顔で額の紋を撫でる。 「巫女は普通の女性ですわ。力を封じるために生け贄として選ばれた女性が、星の紋を受け継ぎ、アギラカリサ王宮に閉じ込められるのです」    望んで巫女になるわけではないと知り、胸が痛んだ。 「ルナリア、どうする?」  フリアンが困るのも当然だ。  オルテンシア王国の立場としては、この二人をアギラカリサ王国へ引き渡さなくてはならない。
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