3 裏の顔(1)

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 ――セレステがおかしいなんてことないわよね。小説の設定では優しくて誰からも愛される子なんだし。私の考えすぎだったみたい。  いろいろ疑って悪かったな……なんて、反省しながらセレステの隣を歩く。  私とセレステの前をレジェスとフリアンが歩き、虫がどうの、水路に魚がいるとか、男の子らしい話をしている。    ――それにしても、王宮内の水路に観賞用の魚がいるってすごいわ。  浅いけど池まであるし、とてもゴージャスだ。  でも、水路は流れが速い。  今の私は五歳で、落ちたら流されてしまうかもしれない。 「こちらが今日咲いた薔薇ですわ」 「綺麗だね。王宮の庭師は腕がいいと、僕の父上が言っていたよ」 「香りがいいな」  セレステが見せたかった薔薇の花は、他の薔薇より大きく美しかった。  庭師がやってきて、その薔薇を惜しみなく切り落とした。 「どうぞ、セレステ様」  庭師はトゲを処理し、一番いい薔薇をセレステの金髪に飾る。 「セレステ、可愛いよ」  フリアンに褒められ、セレステは頬を赤らめた。 「ありがとう」  庭師は私に花を切ってくれなかった。
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