3 裏の顔(1)

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 セレステはそんな私に気づき、水路の横に自生する花を指さした。 「ルナリアと同じ名前の花はそこにあるわ。雑草と同じでどこにでも生えるのよ」  ――セレステは薔薇で、私は雑草。  悪意がないとわかっていても、胸が痛んだ。  ぎゅっとスカートを握り、笑顔を作る。 「うん。ルナリアと同じ名前のお花だよね! 知ってる!」  紫色の花がどこにでも生い茂り、庭師が邪魔にして引き抜いているのを知っている。  レジェスが水路の際に咲いていたルナリアの花を摘む。  そして、自分の髪を結んでいた紐を取り、ブーケを作ると私の髪に飾った。 「俺と同じ目の色をした紫色の花だ。おそろいだな」  レジェスは私が傷ついたのがわかったのだろうか。  解けた黒髪をかきあげたレジェス様は、すごくかっこよかった。   「月の名を持つルナリアの花は、アギラカリサにも咲いている。強くて綺麗な花だと思う。俺は好きだぞ」 「あ、ありがとう! レジェス様!」  レジェス様の優しさだろうけど、ルナリアの花が好きだと言ってくれたことが嬉しかった。    ――薔薇の花ばかりが美しいわけじゃない。
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