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王宮の庭は紫色のルナリアの花が咲き、白や黄色の野の花とともに咲いていた。
これは庭師が、ルナリアの花が埋もれないよう気遣って、手入れしてくれたおかげだ。
昔なら考えられない配慮で、隣を歩くレジェスが立ち止まり、庭と水路を眺めた。
「こんなに小さい水路だったんだな」
「本当に……。もう落ちても溺れませんね」
「あれは、落ちたのではなく、落とされたのだろう?」
静かな声音でレジェスが言った。
風が小さなルナリアの花を揺らし、私とレジェスの視線が、その花の上で止まる。
「俺が見たのは、ほんの一瞬だ。振り返った時に目の端に映っただけだが、見間違いでなければ、そうではないかと思った」
仰いだレジェスの顔は険しく、紫色の瞳を細め、その疑惑が途中から確信に変わったのだとわかる。
「だから、レジェス様は心配して、私に手紙を送ったり、たびたび会いに来てくれていたんですね」
「それだけじゃない。会うたびに成長するルナリアが面白かったからな」
レジェスははっきり言わなかったけど、陰ながら私を助けてくれていたのだとわかる。
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