1360人が本棚に入れています
本棚に追加
肩が触れるかも……なんて考えただけで、ドキドキしてしまった。
昔はもっと普通に近づけたのに、レジェスにおかしく思われてしまう。
平常心を保つため、目をあわさず、視線を遠くにやった。
――胸の動悸が! しっかりして! 私!
不意にレジェスが私の膝を上に頭をのせた。
「レジェス様!?」
「休めと言ったのはお前だぞ?」
「そ、そうですけどっ!」
レジェスが笑っている――笑ってくれたら、私は嬉しくて、胸が苦しくなる。
私の膝の上で目を閉じた。
当たり前だけど、顔がよく見える。
上等な香木の香りと黒髪、武器を使う手は、王子とは思えないくらい古い傷が残っていた。
――どれだけ戦ってきたの?
今だけでも、ゆっくり休んでほしい。
照りつける強い日差しに気づき、闇を生み出す。
レジェスの目蓋の上に日陰を作る。
涼しい風が吹き抜けた。
しばらく眠っていたのに、レジェスがなにかに気づいたかのように、ハッとして目を開けた。
「なにをしている。誰かに見つかるぞ!」
私の手を握り、花の色と同じ紫色の瞳が私を見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!