28  物語を越えて

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 肩が触れるかも……なんて考えただけで、ドキドキしてしまった。  昔はもっと普通に近づけたのに、レジェスにおかしく思われてしまう。  平常心を保つため、目をあわさず、視線を遠くにやった。    ――胸の動悸が! しっかりして! 私!  不意にレジェスが私の膝を上に頭をのせた。 「レジェス様!?」 「休めと言ったのはお前だぞ?」 「そ、そうですけどっ!」  レジェスが笑っている――笑ってくれたら、私は嬉しくて、胸が苦しくなる。  私の膝の上で目を閉じた。  当たり前だけど、顔がよく見える。  上等な香木の香りと黒髪、武器を使う手は、王子とは思えないくらい古い傷が残っていた。  ――どれだけ戦ってきたの?    今だけでも、ゆっくり休んでほしい。  照りつける強い日差しに気づき、闇を生み出す。  レジェスの目蓋の上に日陰を作る。  涼しい風が吹き抜けた。  しばらく眠っていたのに、レジェスがなにかに気づいたかのように、ハッとして目を開けた。   「なにをしている。誰かに見つかるぞ!」  私の手を握り、花の色と同じ紫色の瞳が私を見つめた。
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