28  物語を越えて

7/10
前へ
/314ページ
次へ
 いつも背中を追って、目標にして追いつきたいと思う存在でいてくれた。 「でも、私の王はただ一人。あなただけです」  そうレジェスにはっきり言うと、笑って私を抱き締めた。 「ルナリア。俺の妃になれ! 俺のただ一人の妃だ」  この瞬間、なにかが変わった。  言葉にできないけれど、小説『二番目の姫』の強制力が、完全に消えた――  「……はい。私でいいのなら」  光の巫女でない私を選んでくれたレジェス。  物語を左右することができるのは、この世界の(レジェス)だけ。  昔と同じように私を抱き上げたレジェスが、下から見上げて言った。 「重くなったな」 「あ、当たり前です! 降ろしてくださいっ!」 「子供扱いしているわけじゃないぞ?」  私が言ったことを覚えているようで、それもちょっと恥ずかしかった。   「わかってます……。でも、降ろしてください。レジェス様に大切な相談があります」 「ん? なんだ?」 「これからの話です」  レジェスは私を地上に降ろすと、真面目な顔をした。  「スサナ様に代わり、私がアギラカリサの巫女になります」 「巫女――そういうことか」
/314ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1362人が本棚に入れています
本棚に追加