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私が笑うとレジェス様も笑った。
「……レジェス様。あの花をとってくださいませんか?」
「うん? いいぞ」
セレステがレジェスに頼んだのは、木に咲く白い花だった。
「レジェスに届くかな」
「フリアンも届かないだろ?」
二人の視線は花へ向けられる。
私も花を見上げようとして、セレステと目があった。
セレステが私ににっこり微笑み、私も微笑み返す。
私がセレステとずっと仲良しなら、みんなから嫌われたりしないし、平和に暮らせる。
――なーんだ、簡単!
そう思っていた。
この瞬間までは。
セレステの手が伸び、私の肩を強く押した。
「え?」
突き飛ばされた私は、水路のほうへ体が傾き、足が宙に浮く。
自分の背に水の感触を感じたかと思ったら、冷たい水の中に落ちたのがわかった――違う、落とされた。
ほんの一瞬ことだった。
――今、なにが起きたの?
誰かに気づいてもらおうとして、水面より上に顔をあげる。
けれど、水を飲んでしまい、声がでない。
手足をバタつかせても、ドレスが水を吸って体にはりつき、重くて動けなかった。
帽子が顔を覆い、呼吸できず、水の中へ体が沈んでいく。
――私、ここで死んじゃうの!?
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