29 あなたの幸せを願う ※シモン

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「自分の力で叶えるはずだった夢が、気づいたら他人の力で叶ってしまったから、なんというか……不完全燃焼な気分ですね」 「シモンの夢? なにか夢があるのか?」 「そうですね。今の夢はフリアン様が良い王となることです」 「……努力するよ」  素直な方で助かる。  これが、レジェス殿下なら『良い王とは?』の問答が延々と続いていた。  あんな面倒な男より、穏やかなフリアン様のほうが、私にとっては扱いやすい。   「それにしても、ルナリアはすごいな。レジェスの妃になり、アギラカリサの巫女となった。もう僕の手には届かない存在だ」  昨日、ルナリア様とレジェス殿下から話があってから、ずっとこうである。  ――はぁ、若いですからねぇ……。簡単に踏ん切りはつきませんよね。    フリアン様には結婚を勧めたいところだが、自分も独身である。  宰相の仕事が忙しかったのもあるが―― 「私は先に行きますよ」  ――ルナリア様が旅立つまで、そばで見守っていたかった。  死んだ妹の代わりにされているなどと、ルナリア様にとっては迷惑なことだ。  ノエリアが生きていれば、また違った未来があっただろうか。
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