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「自分の力で叶えるはずだった夢が、気づいたら他人の力で叶ってしまったから、なんというか……不完全燃焼な気分ですね」
「シモンの夢? なにか夢があるのか?」
「そうですね。今の夢はフリアン様が良い王となることです」
「……努力するよ」
素直な方で助かる。
これが、レジェス殿下なら『良い王とは?』の問答が延々と続いていた。
あんな面倒な男より、穏やかなフリアン様のほうが、私にとっては扱いやすい。
「それにしても、ルナリアはすごいな。レジェスの妃になり、アギラカリサの巫女となった。もう僕の手には届かない存在だ」
昨日、ルナリア様とレジェス殿下から話があってから、ずっとこうである。
――はぁ、若いですからねぇ……。簡単に踏ん切りはつきませんよね。
フリアン様には結婚を勧めたいところだが、自分も独身である。
宰相の仕事が忙しかったのもあるが――
「私は先に行きますよ」
――ルナリア様が旅立つまで、そばで見守っていたかった。
死んだ妹の代わりにされているなどと、ルナリア様にとっては迷惑なことだ。
ノエリアが生きていれば、また違った未来があっただろうか。
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