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「えっと、それでですね……。一度だけでいいから、シモン先生をお兄様と呼んでもいいですか? 私、ずっとシモン先生をお兄様だったらいいなって思っていて……」
恥ずかしそうにルナリア様が言った。
「私もルナリア様のことは妹のように思っていました」
「本当ですか? とても嬉しいです。じゃ、じゃあ……お兄様」
ノエリアが『お兄様』と呼んだ気がした。
「お兄様。どうか、私がいなくなった後のオルテンシア王国をよろしくお願いします」
それは、ルナリア様が言っているとわかっているのに涙がこぼれた。
「シモン先生!?」
どうしていいかわからずに、慌てるルナリア様を見て、ノエリアとは違う。
ルナリア様なのだと――けれど、ルナリア様は私にとって、ノエリアと同じくらい大事な妹だった。
「あらまあ、シモン様も人の子ですわね。ルナリア様と別れるのが寂しくて泣いたのですか?」
ルナリア様を追いかけてやってきたティアが、ようやく追いついたようだ。
泣く姿をみられてしまった。
ハンカチを差し出し、ティアは励ますように背中をなでた。
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