29 あなたの幸せを願う ※シモン

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「えっと、それでですね……。一度だけでいいから、シモン先生をお兄様と呼んでもいいですか? 私、ずっとシモン先生をお兄様だったらいいなって思っていて……」  恥ずかしそうにルナリア様が言った。 「私もルナリア様のことは妹のように思っていました」 「本当ですか? とても嬉しいです。じゃ、じゃあ……お兄様」  ノエリアが『お兄様』と呼んだ気がした。 「お兄様。どうか、私がいなくなった後のオルテンシア王国をよろしくお願いします」  それは、ルナリア様が言っているとわかっているのに涙がこぼれた。   「シモン先生!?」  どうしていいかわからずに、慌てるルナリア様を見て、ノエリアとは違う。  ルナリア様なのだと――けれど、ルナリア様は私にとって、ノエリアと同じくらい大事な妹だった。 「あらまあ、シモン様も人の子ですわね。ルナリア様と別れるのが寂しくて泣いたのですか?」  ルナリア様を追いかけてやってきたティアが、ようやく追いついたようだ。  泣く姿をみられてしまった。  ハンカチを差し出し、ティアは励ますように背中をなでた。
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