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「ルナリア、落ち着け!」
パニック状態だった私を水の中から引きあげ、体をつかんだのはレジェスだった。
「足がつく」
――あれ?
冷静になると、なんてことはない。
水の勢いはそこそこあるものの、水路は浅く、簡単に足がつく。
レジェスは大人しくなった私を抱え、水路の外へ出ると、背中を叩いて水を吐き出させた。
「げほっ……けほっ!」
「ルナリア、大丈夫か?」
レジェスの黒髪から水がしたたり、立派な服も濡れていた。
大国アギラカリサの王子を水路に飛び込ませ、ずぶ濡れにしてしまった。
「ご、ごめんなさい……」
謝る私にレジェスが濡れた髪をかき上げ、険しい顔を見せた。
――どうしよう。すごく怒ってる。
「ルナリア、悪かった。俺とフリアンがちゃんと見ていなかったせいだ。今、フリアンが乳母と侍女を呼びに行った。寒いだろうが、少し我慢してくれ」
レジェスが怒っているのは、自分自身に対して怒っているらしい。
私の服と自分の服の水を絞り、私の髪をなでた。
そして、気づく――
「あ、ルナリアの花……」
「流されてしまったな」
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