4 裏の顔(2)

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 せっかくレジェスが私のために作って、髪に飾ってくれたルナリアの花。  髪から外れて流されてしまった。  思った以上にショックで、泣き出しそうになるのを懸命にこらえた。 「また作ればいい。それより、ルナリアが無事でよかった」 「……うん」  レジェスは私が助かってホッとしている。  十二歳でありながら、責任感があり、迷わず水の中に入る行動力。  幼い子を助けるなんて、簡単にできることではない。  水路の水深は浅かったけれど、私は完全に溺れてた。  もし、レジェスが助けてくれなかったら、どうなっていたか…… 「ルナリアったら、はしゃぎすぎよ」 「え……? はしゃぐ……?」  セレステの声がして振り返る。  ――嘘。笑ってる。  セレステの笑顔を見て、私の記憶が一気によみがえってくる。  ――私を水路に落としたのはセレステ。セレステだったわ! 「レジェス様。ごめんなさい。ルナリアが元気すぎて止められなかったの……」  いつの間にパラソルをさしたのか、セレステはレースのパラソルを両手で持ち、優雅に佇んでいる。
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