4 裏の顔(2)

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 ――これって、図書館から水路に落ちるまで、全部セレステの罠だった?  ゾッとして背筋に寒いものが走った。   「まあっ! 大変! セレステ様のドレスが濡れているわ。レジェス様にも着替えを! すぐにタオルをお持ちして!」  お母様のヒステリックな声に、侍女たちが大勢集まってきた。  セレステの世話をする侍女たちは、セレステとレジェスをタオルで拭き、私のことは無視だった。 「お母様。私は平気だから、レジェス様のためにお湯を沸かしてほしいの」 「セレステは優しい子ね。それに比べてルナリアは勉強を怠けて庭で遊んだあげく、水路に落ちたのをセレステのせいにするなんて、とんでもないわ!」 「ち、ちがっ……」  恐怖と水に濡れた寒さで震え、歯の根が合わず、うまく話せなかった。 「罰として今日の夕飯は抜きですよ!」  セレステがパラソルの下で、くすりと笑ったのを見逃さなかった。  涙を浮かべ、ずぶぬれで泥だらけの私はセレステに比べ、惨めでみすぼらしい姿だった。  誰からも相手にされず、いつも優先されるのはセレステだ。  お母様と侍女たちに囲まれたセレステが、私を見下ろし優美に微笑む。
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