5 裏の顔(3)

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 水路に落ちた日、私は高熱を出し、ずっと寝込むことになってしまった。  ――怖いよ。誰か助けて!  水路に突き飛ばされ、水に流されながら、もがく私。  誰にも気づかれず、息苦しくて『死んでしまう!』そう思った瞬間、ひどい汗をかいて目覚め、自分が無事なことに気づく。  ――どうしたらいいの。小説『二番目の姫』には、セレステがルナリアを殺そうとする描写はなかったわ。  小説『二番目の姫』では、幼少期について軽く触れている程度で、『一番目の姫は皆から愛され、二番目の姫は、なんとか自分のほうを見てもらおうと必死に努力した。けれど、二番目の姫は孤独なままだった』と書かれていた。  ――間違ってはないけど、優しい一番目の姫の設定はどこへいったの? 「ルナリア様。お薬ですよ」    ベッドの上であれこれ考えを巡らせていると、乳母が毒々しい液体を持って現れた。  得体のしれない緑色の液体が皿の上で揺れている……  ものすごく苦くて不味い薬で、何種類もの薬草を煎じた体にいい薬らしい。 「学問に目覚めるのはいいことですけど、しっかり治ってから本を読まれたらどうですか?」
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