5 裏の顔(3)

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 熱が少し下がって起き上がれるようになると、侍女たちに頼み、図書館から本を大量に運んでもらった。  本がベッド脇で山積みになっている。 「時間が足りないの!」 「え? 時間が足りない?」 「う、ううん。なんでもない。……お薬、ありがとう」  熱が出て、気持ちが弱ったせいか、うっかり心の声が外に漏れてしまった。  誰に言っても理解してもらえないとわかってる。    ――二番目の姫は頭がおかしいなんて言われるわ。  ただでさえ、物語は私を二番目にしたいのだから、行動と発言には気をつけなくてはならない。 「お薬の口直しに砂糖菓子を置いておきますね。レジェス様がルナリア様にと、わざわざアギラカリサから取り寄せられたんですよ」  さすが、大国アギラカリサ。  オルテンシア王国では見ることのできない贅沢な砂糖菓子。  透明な瓶に入った砂糖菓子は、ピンクや紫、黄色などの色が付いた花の形をしていて、本物の花みたいに精巧な細工が施されている。   食べるのがもったいないくらいだ。  両親から声をかけられることもなかったから、レジェスの心遣いは嬉しかった。  ――愛されないってわかってる。だから、大丈夫……。  小説『二番目の姫』には、ルナリアが孤独な幼少時代を送ると書いてあった。  だから、両親とセレステが一度もお見舞いに来てくれないのはしかたないと思って諦めている。  諦めているからといって、傷つかないわけじゃないけど……
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