5 裏の顔(3)

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   次はこの世界の地理を学ぼうと、分厚い本を開こうとした時―― 「ルナリアは頑張っているんだから、そんなに怒らなくてもいいと思うよ」  フリアンがやってきた。  金髪に青い目、キラキラしたオーラを放ち、今日も王子様みたいだった。  フリアンを見て乳母と侍女たちが喜ぶ。 「まあ! フリアン様! 今日もお見舞いにいらしてくださったのですね!」  「ルナリア様に花を持ってきてくださって……。花瓶を用意してまいりますわ」 「ルナリア様、よかったですわね」  誰もお見舞いに来ないから、乳母と侍女たちは私以上に気にしていた。  フリアンが来て盛り上げてくれるのも、他に誰も来ないと知っているから…… 「昨日より、顔色がいいみたいで安心したよ」  フリアンはどうぞと小さな花束を私に差し出した。   「ルナリアの花……」 「レジェスからもらって喜んでいたから、僕も作ってみたんだ」    私の名前と同じ紫色の小さな花で作られていた。  フリアンは私のお見舞いのため、毎日、王宮へ通ってくれていたらしい。 「フリアン様。ありがとう」
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