5 裏の顔(3)

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 花束が嬉しくて微笑むと、乳母と侍女たちは泣きそうな顔で私を眺めた。 「やっとルナリア様に笑顔が戻りましたね」 「ずっと笑わないから心配していたんですよ」  ――みんな、心配してくれてたんだ。  私は孤独じゃない。  少なくとも今は、ひとりぼっちじゃないわ。   小説『二番目の姫』には、幼馴染みのフリアンがルナリアの寂しい心を癒してくれたと書いてあった。   「今日はセレステ様のところにもお見舞いへ行ってきたんだ」 「え? お姉様もお熱?」 「うん。ちょうどルナリアが高熱を出した頃かな。セレステ様も熱を出して寝込まれたんだ」  私が不思議そうな顔をしていたせいか、フリアンが説明してくれた。 「ルナリアが水路に落ちた時、セレステ様も水をかぶったそうなんだ。それが原因だって、僕の父上が言っていたのを聞いたよ」 「ルナリアのせい……?」  水路に落ちた私のせいで、セレステが水をかぶって風邪をひいた――私が寝込んでいる間に、そんな話になっていようとは思いもしなかった。  しかも、私のせいだと言いふらしているのか、フリアンのお父様にまで話が広まってる。   セレステも熱が出したから、お父様とお母様はセレステに付きっきりで、一度も私のところへは来なかったのだ。
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