5 裏の顔(3)

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 ――やっぱり二番目。セレステを大切にしているから、来なくて当たり前なんだけど……  わかってるはずなのに胸が痛んだ。  せめて、ほんの少しだけ部屋の扉を開けて覗いてくれるだけでもよかった。  熱にうなされている間、お見舞いに来てくれたのはフリアンだけだった。  でも、そのフリアンだって、私がセレステに水路へ落とされたと言ったところで信じてくれないだろう。 「ルナリア?」 「う、ううん。お姉様に後からごめんなさいするねっ!」 「それがいいと思う。陛下たちがすごくお怒りだったから……」  謝るということは、セレステが私を水路に突き飛ばしたことをなかったことにするということだ。  それが悔しくて、シーツをぎゅっと握りしめた。  ――死にかけたのは私なのに、心配されるのはセレステのほう。私が二番だから!  でも、なにがあってもこの先、私はセレステを妬んだり、羨んだりしてはいけない。  小説『二番目の姫』では、ルナリアは絶望し、闇の力を暴走させて死んでしまう。   優先するのは、生き延びることなのだと、自分に言い聞かせた。 「……お姉様、元気になった?」 
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